(推理小説・探偵小説)覚書

読後の覚書(主に推理探偵小説)

2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『古事記』 池澤夏樹 訳

電子書籍時代の現代語訳古事記 池澤夏樹=個人編集の日本文学全集が2014年から刊行され始めた。実は池澤氏の世界文学全集の方は以前にえいやっと自分への褒美の積りで全巻セットを購入したのであるが、個人的事情により手元にはなく、遠く離れた処で私を待っ…

『途上』 谷崎潤一郎 / 『赤い部屋』 江戸川乱歩

プロバビリティーの犯罪 谷崎潤一郎は何でも書く人であって、怪奇幻想がかったものや探偵小説の様なものも時々書いていた。日本の創作探偵小説と言うと、何度も何度も書いているけれども、黒岩涙香の『無惨』が明治の半ばにポンと出た後は細々と何とか続いて…

『夏の朝の成層圏』 池澤夏樹

近代社会からの漂流 最近、池澤夏樹の現代語訳『古事記』を読んでいる。前々から池澤夏樹=個人編集の日本文学全集を読みたいと思っていたのであるが、遂に電子書籍化が始まったのである。『古事記』の前書きの、池澤夏樹の語り口は優しく、柔らかく、文学へ…

“The Greene Murder Case” S. S. Van Dine (『グリーン家殺人事件』 S・S・ヴァン・ダイン)

陰鬱な館に潜む悪意 相変わらず、江戸川乱歩の『悪人志願』を読んでいる、のだが、ネタバレのせいでヴァン・ダインに関する随筆が中々読めなかった。それが理由でまず“The ‘Canary’ Murder Case”を前回読み終えたのだが、実は、同じ随筆の中で“The Greene Mu…

“Through the Language Glass: Why the World Looks Different in Other Languages” Guy Deutscher (『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』 ガイ・ドイッチャー)

言語を通して、我々は世界を見ている 最近、英語の語彙を増やすためと長文を読む体力を付けるために英語の書籍を読むようにしている。推理探偵小説は興味が先行するので英文でも非常に読み易くて既に何冊か読む事に成功したが、ここで友人に薦められた色の認…

“The ‘Canary’ Murder Case” S. S. Van Dine (『カナリヤ殺人事件』 S・S・ヴァン・ダイン)

誰もがみんな嘘吐き野郎 最近、江戸川乱歩の『悪人志願』を読んでいる。江戸川乱歩の随筆集というものは非常に面白くて、失礼ながら、氏のイマイチぱっとしない作よりも随分面白い。自作解説から様々な推理探偵小説界の雑感、日本の推理探偵小説同人の逸話、…

『歴史』 ヘロドトス 松平千秋 訳

独裁制と民主制の戦い:ペルシア戦争を巡る一大歴史叙述 歴史に関する書物は中々面白いものが沢山ある。私は子供の頃から歴史関係の小説はかなり好きであった。『三国志演義』に始まり、『水滸伝』(歴史物では無いか)、陳舜臣の『十八史略』、山岡壮八の『…