(推理小説・探偵小説)覚書

読後の覚書(主に推理探偵小説)

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『殺人鬼』 浜尾四郎

日本における本格推理長編の嚆矢 こないだ、東西ミステリーベスト100に選ばれていた高木彬光の『刺青殺人事件』を読んだ処、やっぱり中々楽しめたので、また東西ミステリーベスト100のうち日本の作家の手に依る古い推理小説を、という事で、1931年に新聞連載…

『ロビンソン・クルーソー』 デフォー 平井正穂 訳 

労働と信仰と西洋社会の拡大と 池澤夏樹の『夏の朝の成層圏』を読んでいる時に、当然、ロビンソン・クルーソーを思い出した。子供の頃に福音館書店から刊行されている古典童話シリーズで読んだのは覚えているのだが、細かい所は当然の様に忘れてしまっている…

『刺青殺人事件』 高木彬光

妖艶な刺青の魔力 この覚書blogは元々は文藝春秋の東西ミステリーベスト100に選ばれた推理小説をどんどん読んでその感想を書き残しおこうと思って始めたのだけれど、そう言えば最近日本の推理小説でそのベスト100に入っているものを余り読んでいなかったなと…

『LGBTを読み解く-クィア・スタディーズ入門』 森山至貴

クィア・スタディーズの「今」を知る 最近、フェミニズムを解説する書籍やセクシャルマイノリティの理論に関する言説を読んでいる。その理由は、これらの理論はマイノリティが如何にしてマジョリティと渡り合うか、そして、如何にして多様性と自由を尊重しな…

『813』 モーリス・ルブラン 保篠龍緒 訳

怪盗ルパンが欧州を揺るがす謎に挑む 私が小学生の時分、ポプラ社から出ている少年探偵団シリーズと怪盗ルパンシリーズは非常にポピュラーな子供向け怪奇冒険譚シリーズとして皆愛読していた。私は当時はもっぱらルパンものを読んでいたのだけれど、いい年に…

『イソップ寓話集』 イソップ 中務哲郎 訳

最古の寓話集が示す節理 最近、ギリシア物にハマっている、と云うか、古い古いお話に嵌まっていて、ギリシア物と古事記関連の書物を読むのに多くの時間を費やしている。古い書物の良い処は、やはり、それ以上遡るのが難しい物語の源泉の様な何かを味わえる処…

“The Benson Murder Case” S. S. Van Dine (『ベンスン殺人事件』 S・S・ヴァン・ダイン)

心理的証拠と状況証拠:ファイロ・ヴァンス登場 江戸川乱歩の『悪人志願』中にヴァン・ダインの推理小説『カナリヤ殺人事件』と『グリーン家殺人事件』のネタバレが含まれていた御蔭でヴァン・ダインの推理小説Philo Vanceシリーズを読み始めたのだけれども…