(推理小説・探偵小説)覚書

読後の覚書(主に推理探偵小説)

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『小説のストラテジー』 佐藤亜紀

小説読み方談義1 文芸作品を読む事それ自体は当然上質な娯楽であるが、只読むだけではなく、その内部構造を解き明かそうと努力する事もまた別種の娯楽である。私の場合は、今までは只々文章を読み、その空気を味わうだけで満足しており、そしてその内に内容…

『屋根裏の散歩者』 江戸川乱歩

江戸川乱歩の異世界散歩 日本にも色々な推理探偵小説作家が存在するが、やはり江戸川乱歩と横溝正史が私の好む所である。おそらく世間一般でも乱歩が群を抜いて愛されているのではないだろうか。私が思うに、乱歩の作品はどこか異世界への扉を開く感があるの…

『死者の奢り・飼育』 大江健三郎

大江健三郎の描く見えない壁 ふと大江健三郎を読み返している。私が読書を始めたころには大江健三郎はすでに大家であり、まもなくノーベル賞を受賞したことを覚えている。当時私は、大江健三郎の小説を読んだことはなくリベラル作家という柔らかい印象を持っ…

『ロートレック荘事件』 筒井康隆

筒井康隆が放った本格推理小説 もしこれからこの『ロートレック荘事件』読まれる方があれば、こう助言したい、「第15章までを読み終えても確信をもって犯人を推理出来なければ、もう一度最初から丁寧に読み直すべきである。この推理探偵小説は十分にヒントを…

『斜め屋敷の犯罪』 島田荘司

奇妙な館には何かがある ここ最近に読んだ今一つピンと来なかった推理探偵小説に関しても少し覚書を残しておこうと思う。 『斜め屋敷の犯罪』島田荘司、御手洗潔シリーズの2作目である。 いわゆる天才型の探偵が登場するトリック至上主義的な探偵小説である…

『糞尿譚』 火野葦平

鮎川哲也の『黒いトランク』は推理小説として佳作なだけではなく、新たな読書の扉も開いてくれる良作であった。その中で紹介されていた二人の作家、火野葦平の『糞尿譚』と石川達三の『青春の蹉跌』を読んでみた。この両者は芥川賞作家であり、当然、文壇で…

『長いお別れ/ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー

翻訳ものはとりあえずやめておくと書いたけれども、最近、レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ/ロング・グッドバイ』を読んだので、覚書。『長いお別れ/ロング・グッドバイ』としたのは、つまるところ、清水俊二氏の訳と村上春樹氏の訳と両方を読んだ…

『幻影城』 江戸川乱歩

『幻影城』は江戸川乱歩による探偵小説解説随筆集である。主には海外の推理探偵小説に関する雑感が記されている。終戦直後の当時はまだ洋書を手に入れるのは簡単ではなかったであろうし、当然、洋書なれば外国語で読まなければならない。訳本も存在したであ…