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(推理小説・探偵小説)覚書

読後の覚書(主に推理探偵小説)

『怪談 牡丹燈籠』 三遊亭圓朝

幽霊と仇討ちと色と欲 三遊亭圓朝のお噺の口述速記本が言文一致の開祖であるというのは割かし良く知られた話である様だ。その中でも『怪談 牡丹燈籠』(1884年:明治17年)の口述本が言文一致に与えた影響はかなり大きい様で、二葉亭四迷が文章の書き方に関…

"The Big Bow Mystery" Israel Zangwill (『ビッグ・ボウの殺人』 イズレイル・ザングウィル)

本格密室殺人の嚆矢 相変わらず、江戸川乱歩の古典ベストテンを読み続けていて、これで丁度5作目を読み終わった。今回読んだのは1891年に発表されたザングウィルの"The Big Bow Mystery"*1、この小説は推理探偵小説史に燦然と輝く密室殺人トリックを提示し…

『死者の書』 折口信夫

繰り返し繰り返し日は昇り沈みゆく、その果てに 哲学的な思想と云うと、現代の日本では大抵の場合西洋の思想家が紹介されており、人口に膾炙するものも大抵は西洋の思想家である。一方で当然東洋にも東洋の思想が存在する。先日読んだ吉本隆明の『読書の方法…

"The Eye of Osiris" R. Austin Freeman (『オシリスの眼』 オースティン・フリーマン)

謎の失踪事件にソーンダイク博士が科学的推理で挑む ここの処、江戸川乱歩の古典ベストテンを読むのにハマっていて順番に読んでいっている。そもそも、推理探偵小説は往々にして先人の推理トリックを巧く作り直して、新たなトリックを構築する事があるので、…

『批評理論入門 「フランケンシュタイン」解剖講義』 廣野由美子

小説読み方談義4 ここの処、小説を読むのと並行して、文学理論に関係する様な書籍を選んで読んでいる。少し前に読んだイーグルトンの『文学とは何か』は個人的には近年稀に体験した衝撃であって、この領域の書物・理論に関する興味が増々膨れ上がって行く日…

『幽霊塔』 黒岩涙香 / 江戸川乱歩

涙香が描き、乱歩が愛した怪美人と幽霊塔 一時期、江戸川乱歩は小酒井不木や甲賀三郎と共に涙香的な筋や描写を持った娯楽探偵小説への復古を称揚していた。そして、その黒岩涙香への敬愛の念の現れか、涙香小史の翻案輸入物の内、推理探偵風味の強い『白髪鬼…

『舞姫』 森鴎外

近代的自我なる聖杯を求めて 先だって二葉亭四迷の『浮雲』を読み、日本文学の黎明期の苦心と工夫とその発展とを目の当たりにした訳であるが、最近読んでいる渡辺直巳の『日本小説技術史』に於いて、『浮雲』の次に森鴎外の『舞姫』が紹介されていた。当然『…

『日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ』 堀啓子

お手軽な日本推理小説小史 どんなものでも、その歴史を調べるのは面白い。そして当然小説群にもその歴史的経緯が存在する。例えば、ポーの『モルグ街の殺人』、この小説が現代の推理小説界にポンと跳び出てきたとして、必読の書と看做されるようになるかとい…

『浮雲』 二葉亭四迷

二葉亭四迷による日本文学表現への挑戦 少し前に『真景累ヶ淵』を読んだ処、どうやら『怪談 牡丹燈籠』の方の様であるが、三遊亭圓朝のお噺の口述筆記本が二葉亭四迷の言文一致活動に影響を与えた事を知り、先行する文学を巧く参考にして書かれている小説も…

"The Leavenworth Case" Anna Katharine Green (『リーヴェンワース事件(隠居殺し)』 アンナ・K・グリーン )

東西ミステリーベスト100と並行して江戸川乱歩の選んだ古典ベストテンを最近読んでいる。そのリストの中に挙げられている小説の内、ドイルの『バスカヴィル家の犬』以外の他の小説は今となっては知名度的にそれ程有名では無くなってしまっている物が多い…

『文学とはなにか-現代批評理論への招待』 テリー・イーグルトン 大橋洋一 訳

小説読み方談義3 今までに読んだ書物の内容をほぼ総て忘れてしまっている事の虚しさから読後の覚書を書き残し始めたのではあるが、文章を書けば書く程、自らの読みの浅さを思い知り、これではいかん、何とか改善したいと思い、更には他の人の素晴らしい批評…

"The Moonstone" Wilkie Collins (『月長石』 ウィルキー・コリンズ)

コリンズの古典的傑作-呪われたダイヤ「月長石」を巡る超長編 推理探偵小説というものは、個人的な印象ではあるが、SF小説と並んでベスト何々みたいなリストが作られ易い分野であると思う。江戸川乱歩が作成したベストテンのリストも何種類か存在していて『…

『読書の方法』 吉本隆明

小説読み方談義2 ここの処、小説の読み方や読書の仕方みたいな事柄を扱った書物を割と読み始めている。こういう類の書物を読もうと思い立ったのは、『小説のストラテジー』の覚書を書いた時にも書いたのだけれども、小説をより良く味わいたいと最近頻りに感…

『アクロイド殺し』 アガサ・クリスティー

情報化社会の恐怖 私がアガサ・クリスティーを良く読んでいたのは随分昔の話であって、当時はポワロものは何冊かは読んでいたような気がするし、勿論、この『アクロイド殺し』も読んだのを覚えている。微かな記憶を辿ってみる処、当時はこの小説にあまり感心…

『芽むしり仔撃ち』 大江健三郎

この分断と衝突の時代に大江健三郎を改めて読む 『芽むしり仔撃ち』は1958年に発表された中編である。私はこの小説を10年少しくらい前に確かに読んだはずなのだが、再読中その記憶が蘇ることは殆どなかった。物忘れが激しいというのは何度も同じ小説を楽しめ…

『二銭銅貨』・『一枚の切符』 江戸川乱歩

江戸川乱歩会心のデビュー作 江戸川乱歩は大学を出た後、一つの職に長く落ち着く事も無くふらふらと色々な事を試しながら「何か面白い事でもないかしらん」と暮らしていたらしい。そして大正11年頃、妻子持ちであるにも拘らず、どうも現代で言えばニート扱い…

『酒と戦後派 人物随想集』 埴谷雄高

埴谷雄高が見てきた人々 15年程前に埴谷雄高の『死霊』が講談社文芸文庫から3分冊の文庫本で登場し、これは良い機会だから是非とも読まねばならん、と、私のみではなく、周りの読書好きは皆購入した。勿論、文庫本でなければちょっと高価ではあったが簡単に…

『バスカヴィル家の犬』 アーサー・コナン・ドイル / "Sherlock Holmes Was Wrong: Reopening the Case of The Hound of the Baskervilles" Pierre Bayard

著者の意図を離れて-怪奇探偵小説と秘められた物語 コナン・ドイルの『バスカヴィル家の犬』を久方ぶりに再読してみた。最後に読んだのはかれこれ20年以上前になると思うが、ルブランのルパン物と共に私の怪奇冒険探偵小説体験の原点と言える小説である。今…

『真景累ヶ淵』 三遊亭圓朝

神経と怨念と因縁と 怪奇探偵小説には怨念や妄念は付き物である。そもそも犯人が淡白であったり理知的すぎるとそこで描かれる事件に怪奇風味が出てこない。やはり、犯人の側に何か狂気であったり、強い怨念や妄念の様なものが存在するので事件が怪奇がかって…

『魔都』 久生十蘭

魔都東京に妖しい奴等が跋扈する 久生十蘭は綺麗で幻想的な小さな物語を、煌びやかな言葉を散りばめ紡ぎだす屈指の短編小説家という印象が私にはあったのだが、このような『魔都』という長編の小説、しかも探偵小説に分類されるような長編を書いていた事は知…

『青春の蹉跌』 石川達三

秀才青年の躓きと破滅 文学好きなれば大抵の人は一度は芥川賞に興味を持った事はあるだろう。ではその芥川賞の第一回目の受賞者は誰かと言う事になると、案外知られていないような個人的感覚がある。第一回目の受賞者は石川達三であり、作品は『蒼氓』である…

『無惨』 黒岩涙香

本邦初の創作探偵小説ー黒岩涙香の挑戦 推理探偵小説というものはかなり特殊なジャンルの小説であるという事は誰しもが認める処であると思う。となると、さて、その探偵小説なるジャンルを確立した嚆矢はどの小説になるのか、という疑問が湧いてくる、勿論、…

『小説のストラテジー』 佐藤亜紀

小説読み方談義1 文芸作品を読む事それ自体は当然上質な娯楽であるが、只読むだけではなく、その内部構造を解き明かそうと努力する事もまた別種の娯楽である。私の場合は、今までは只々文章を読み、その空気を味わうだけで満足しており、そしてその内に内容…

『屋根裏の散歩者』 江戸川乱歩

江戸川乱歩の異世界散歩 日本にも色々な推理探偵小説作家が存在するが、やはり江戸川乱歩と横溝正史が私の好む所である。おそらく世間一般でも乱歩が群を抜いて愛されているのではないだろうか。私が思うに、乱歩の作品はどこか異世界への扉を開く感があるの…

『死者の奢り・飼育』 大江健三郎

大江健三郎の描く見えない壁 ふと大江健三郎を読み返している。私が読書を始めたころには大江健三郎はすでに大家であり、まもなくノーベル賞を受賞したことを覚えている。当時私は、大江健三郎の小説を読んだことはなくリベラル作家という柔らかい印象を持っ…

『ロートレック荘事件』 筒井康隆

筒井康隆が放った本格推理小説 もしこれからこの『ロートレック荘事件』読まれる方があれば、こう助言したい、「第15章までを読み終えても確信をもって犯人を推理出来なければ、もう一度最初から丁寧に読み直すべきである。この推理探偵小説は十分にヒントを…

『斜め屋敷の犯罪』 島田荘司

ここ最近に読んだ今一つピンと来なかった推理探偵小説に関しても少し覚書を残しておこうと思う。 『斜め屋敷の犯罪』島田荘司、御手洗潔シリーズの2作目である。 いわゆる天才型の探偵が登場するトリック至上主義的な探偵小説である。筆者と読者のフェアな…

『糞尿譚』 火野葦平

鮎川哲也の『黒いトランク』は推理小説として佳作なだけではなく、新たな読書の扉も開いてくれる良作であった。その中で紹介されていた二人の作家、火野葦平の『糞尿譚』と石川達三の『青春の蹉跌』を読んでみた。この両者は芥川賞作家であり、当然、文壇で…

『長いお別れ/ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー

翻訳ものはとりあえずやめておくと書いたけれども、最近、レイモンド・チャンドラーの『長いお別れ/ロング・グッドバイ』を読んだので、覚書。『長いお別れ/ロング・グッドバイ』としたのは、つまるところ、清水俊二氏の訳と村上春樹氏の訳と両方を読んだ…

『幻影城』 江戸川乱歩

『幻影城』は江戸川乱歩による探偵小説解説随筆集である。主には海外の推理探偵小説に関する雑感が記されている。終戦直後の当時はまだ洋書を手に入れるのは簡単ではなかったであろうし、当然、洋書なれば外国語で読まなければならない。訳本も存在したであ…

『黒いトランク』 鮎川哲也 2

『黒いトランク』覚書の続き。 推理小説として佳作な本作だが、推理探偵とは関係のない話であるが、ひたすらに旅情をそそる。私は若い頃は2時間サスペンスなんぞは何が面白いのかさっぱり分からなかったが、年を経るに従ってあの変わり映えのない安定した雰…

『黒いトランク』 鮎川哲也 1

鮎川哲也という作家に関しては、実際のところこの年になるまで全く知らなかった。もし、たまたま推理探偵小説を網羅的に読もうと思い立たず、東西ミステリーベスト100などというリストを目にすることがなければ、今でもその名を知ることはなかっただろう…

推理探偵小説 読書録

推理探偵小説の読後の覚書のようなものをこれから書いていこうと思う。 私は時々小説を読むし、推理探偵小説もしばしば読む。推理探偵小説は自分にとっては非常に読みやすく、ある種の娯楽として嗜んでいる。小学生くらいの時分に図書館で南洋一郎が子供向け…

とりあえず

とりあえずまずは乱歩の幻影城でも読みながら色々と考えてみようかなと、まぁ推理探偵小説といってもいろいろあることだし、自分の場合は、いわゆる本格派的トリック重点的なものよりも、それこそ幻影城で乱歩氏が推していたみたいな、推理小説でありつつも…