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(推理小説・探偵小説)覚書

読後の覚書(主に推理探偵小説)

"The Big Bow Mystery" Israel Zangwill (『ビッグ・ボウの殺人』 イズレイル・ザングウィル)

本格密室殺人の嚆矢 相変わらず、江戸川乱歩の古典ベストテンを読み続けていて、これで丁度5作目を読み終わった。今回読んだのは1891年に発表されたザングウィルの"The Big Bow Mystery"*1、この小説は推理探偵小説史に燦然と輝く密室殺人トリックを提示し…

"The Eye of Osiris" R. Austin Freeman (『オシリスの眼』 オースティン・フリーマン)

謎の失踪事件にソーンダイク博士が科学的推理で挑む ここの処、江戸川乱歩の古典ベストテンを読むのにハマっていて順番に読んでいっている。そもそも、推理探偵小説は往々にして先人の推理トリックを巧く作り直して、新たなトリックを構築する事があるので、…

『幽霊塔』 黒岩涙香 / 江戸川乱歩

涙香が描き、乱歩が愛した怪美人と幽霊塔 一時期、江戸川乱歩は小酒井不木や甲賀三郎と共に涙香的な筋や描写を持った娯楽探偵小説への復古を称揚していた。そして、その黒岩涙香への敬愛の念の現れか、涙香小史の翻案輸入物の内、推理探偵風味の強い『白髪鬼…

『日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ』 堀啓子

お手軽な日本推理小説小史 どんなものでも、その歴史を調べるのは面白い。そして当然小説群にもその歴史的経緯が存在する。例えば、ポーの『モルグ街の殺人』、この小説が現代の推理小説界にポンと跳び出てきたとして、必読の書と看做されるようになるかとい…

"The Leavenworth Case" Anna Katharine Green (『リーヴェンワース事件(隠居殺し)』 アンナ・K・グリーン )

東西ミステリーベスト100と並行して江戸川乱歩の選んだ古典ベストテンを最近読んでいる。そのリストの中に挙げられている小説の内、ドイルの『バスカヴィル家の犬』以外の他の小説は今となっては知名度的にそれ程有名では無くなってしまっている物が多い…

"The Moonstone" Wilkie Collins (『月長石』 ウィルキー・コリンズ)

コリンズの古典的傑作-呪われたダイヤ「月長石」を巡る超長編 推理探偵小説というものは、個人的な印象ではあるが、SF小説と並んでベスト何々みたいなリストが作られ易い分野であると思う。江戸川乱歩が作成したベストテンのリストも何種類か存在していて『…

『アクロイド殺し』 アガサ・クリスティー

情報化社会の恐怖 私がアガサ・クリスティーを良く読んでいたのは随分昔の話であって、当時はポワロものは何冊かは読んでいたような気がするし、勿論、この『アクロイド殺し』も読んだのを覚えている。微かな記憶を辿ってみる処、当時はこの小説にあまり感心…

『二銭銅貨』・『一枚の切符』 江戸川乱歩

江戸川乱歩会心のデビュー作 江戸川乱歩は大学を出た後、一つの職に長く落ち着く事も無くふらふらと色々な事を試しながら「何か面白い事でもないかしらん」と暮らしていたらしい。そして大正11年頃、妻子持ちであるにも拘らず、どうも現代で言えばニート扱い…

『バスカヴィル家の犬』 アーサー・コナン・ドイル / "Sherlock Holmes Was Wrong: Reopening the Case of The Hound of the Baskervilles" Pierre Bayard

著者の意図を離れて-怪奇探偵小説と秘められた物語 コナン・ドイルの『バスカヴィル家の犬』を久方ぶりに再読してみた。最後に読んだのはかれこれ20年以上前になると思うが、ルブランのルパン物と共に私の怪奇冒険探偵小説体験の原点と言える小説である。今…

『魔都』 久生十蘭

魔都東京に妖しい奴等が跋扈する 久生十蘭は綺麗で幻想的な小さな物語を、煌びやかな言葉を散りばめ紡ぎだす屈指の短編小説家という印象が私にはあったのだが、このような『魔都』という長編の小説、しかも探偵小説に分類されるような長編を書いていた事は知…

『無惨』 黒岩涙香

本邦初の創作探偵小説ー黒岩涙香の挑戦 推理探偵小説というものはかなり特殊なジャンルの小説であるという事は誰しもが認める処であると思う。となると、さて、その探偵小説なるジャンルを確立した嚆矢はどの小説になるのか、という疑問が湧いてくる、勿論、…

『屋根裏の散歩者』 江戸川乱歩

江戸川乱歩の異世界散歩 日本にも色々な推理探偵小説作家が存在するが、やはり江戸川乱歩と横溝正史が私の好む所である。おそらく世間一般でも乱歩が群を抜いて愛されているのではないだろうか。私が思うに、乱歩の作品はどこか異世界への扉を開く感があるの…

『ロートレック荘事件』 筒井康隆

筒井康隆が放った本格推理小説 もしこれからこの『ロートレック荘事件』読まれる方があれば、こう助言したい、「第15章までを読み終えても確信をもって犯人を推理出来なければ、もう一度最初から丁寧に読み直すべきである。この推理探偵小説は十分にヒントを…

『斜め屋敷の犯罪』 島田荘司

ここ最近に読んだ今一つピンと来なかった推理探偵小説に関しても少し覚書を残しておこうと思う。 『斜め屋敷の犯罪』島田荘司、御手洗潔シリーズの2作目である。 いわゆる天才型の探偵が登場するトリック至上主義的な探偵小説である。筆者と読者のフェアな…

『幻影城』 江戸川乱歩

『幻影城』は江戸川乱歩による探偵小説解説随筆集である。主には海外の推理探偵小説に関する雑感が記されている。終戦直後の当時はまだ洋書を手に入れるのは簡単ではなかったであろうし、当然、洋書なれば外国語で読まなければならない。訳本も存在したであ…

『黒いトランク』 鮎川哲也 2

『黒いトランク』覚書の続き。 推理小説として佳作な本作だが、推理探偵とは関係のない話であるが、ひたすらに旅情をそそる。私は若い頃は2時間サスペンスなんぞは何が面白いのかさっぱり分からなかったが、年を経るに従ってあの変わり映えのない安定した雰…

『黒いトランク』 鮎川哲也 1

鮎川哲也という作家に関しては、実際のところこの年になるまで全く知らなかった。もし、たまたま推理探偵小説を網羅的に読もうと思い立たず、東西ミステリーベスト100などというリストを目にすることがなければ、今でもその名を知ることはなかっただろう…